「増便すれば解決」は本当?長岡花火大会から考える運行管理者の仕事と公共交通の現実

公共交通ニュース

はじめに

毎年多くの来場者で賑わう花火大会。

SNSやニュースでは、

  • 「駅まで全然進まない」
  • 「バス待ちが長すぎる」
  • 「もっと増便すればいいのに」

といった声を目にした方も多いのではないでしょうか。

確かに利用者の立場からすると、「もっと電車やバスを増やせば解決するのでは?」と思うかもしれません。

しかし、運行管理者の立場から見ると、増便はそれほど簡単な話ではありません。

今回は、大規模イベントで公共交通機関が直面する課題について、運行管理者の視点から解説します。

※今年は新幹線で多く帰宅困難者が発生しましたが、バスにおいても同じ事が言えますのでバスの観点でやっていきます


例:長岡花火大会で起きた大混雑

長岡花火大会には毎年多くの来場者が訪れます。

特に花火終了後は、多くの人が一斉に駅へ向かうため、駅周辺やバス乗り場は非常に混雑します。

鉄道会社では臨時列車を運転したり、駅への入場規制を行ったりと、さまざまな対策を実施しています。今回も新幹線は臨時便を出していました。

それでも利用者が一度に集中するため、長時間の待ち時間が発生することがあります。

これは長岡花火大会だけでなく、全国の大規模イベントでも共通する課題です。


「増便すればいい」は簡単ではない理由

「バス・電車をもっと走らせれば解決する」と思われがちですが、実際には多くの条件を満たさなければ増便はできません。

① 運転士を確保しなければならない

最も大きな課題は、運転士の確保です。

例えば、近年はバス業界全体で運転士不足が続いており、通常ダイヤを維持するだけでも人員確保に苦労している会社は少なくありません。

イベント当日に増便するには、その分の運転士を確保する必要があります。

さらに、運転時間や休憩時間には法令上のルールがあるため、「空いている人がいるから乗務してもらう」という単純な話ではありません。

「通常便を削ってでも臨時便に回せばいい」なんて本末転倒です。利用者が供給側に合わせなきゃいけない時代になっています。

「だって運転士がいないから。」


② 車両にも限りがある

当然ですが、バスは無限にあるわけではありません。

営業所では通常ダイヤを運行するために車両を使用しており、予備車にも限りがあります。

イベント用に大量の車両を確保すると、通常運行へ影響が出る可能性もあります。

前提として、イベントに対して臨時輸送を行えば収入としては一時的に多く発生しますが、通常運行は普段から利用してもらっているお客様のためにも無くすことはできません。信用に繋がる一歩なので。

普段から車両を多く用意しておけばいい・・・なんて暴論です。維持費考えてください。


③ 点呼や運行管理も増える

増便するということは、運転士が増えるということです。

その分、

  • 出庫点呼
  • 入庫点呼
  • アルコールチェック
  • 健康状態の確認
  • 運行指示

など、運行管理者の業務も増えていきます。

安全運行のためには、一人ひとりに対して適切な点呼を行わなければなりません。

増便は「バスを出す」だけではなく、営業所全体の体制を整える必要があります。


④ 道路が渋滞すると増便の効果が薄れる

イベント終了後は周辺道路も大渋滞になります。

たとえバスを増便しても、

  • バスが渋滞にはまる
  • 折り返し運転ができない
  • 次の便が遅れる

という状況になることもあります。

つまり、車両を増やせば必ず輸送力が上がるとは限らないのです。大規模なイベント時はほぼ遅れます。絶対に定時で運行はできません。

大規模なイベントではなくても身近なところだと、毎年クリスマスありますよね。クリスマスって皆さん何されますか?

「特別な日だから夜はイルミネーション見よう」とか、「ケーキ買いに行こう」とかいろんなことしますよね。

チェーン店ではないけど、おいしいケーキ屋さんがあるからそこに買いに行こう。でも駐車場大きくないから車は止められるかな・・・やっぱ止められないけど、長時間じゃないから一旦路上に停車して待ってよう・・・。なんて20人が同じ事考えたらどうなるかわかりますよね。普段、全く混まない付近での渋滞が発生するんです。そうなれば、通常運行すら危ういんです。数千人が来る大規模なイベントだったらどうなるか、お分かりですよね・・・


運行管理者は何を考えているのか

運行管理者が最優先に考えるのは、「できるだけ多くの人を安全に輸送すること」です。

そのためには、

  • 運転士の体調管理
  • 車両の運用
  • 運行状況の把握
  • 関係部署との連携
  • トラブル発生時の判断

など、多くの業務を同時に進めています。

利用者からは見えませんが、安全な運行を維持するために、多くの人が裏側で動いています。

大規模な輸送時はイベントに注力するための人員が事務所内でも臨時で出勤しています。


利用者としてできること

公共交通機関を利用する側にも、混雑を少しでも緩和するためにできることがあります。

例えば、

  • 花火終了直後ではなく、時間をずらして移動する
  • 事前に帰りのルートを確認しておく
  • ICカードの残高をあらかじめ確認しておく
  • 駅係員や誘導員の案内に従う

一人ひとりの行動が、全体の混雑緩和につながる場合があります。

今回のパターンでいうと、日帰りではなく宿泊するのも1つの手段です。

フェニックス(花火)が定刻よりも押してしまい、長くなったということは終車に近づいているわけですから、これやばいかも・・・という感覚を見つけてもらいたいです。

最後まで見たいのはわかります。だって綺麗ですもの。でも、選択肢を取るなら最悪のことをよく考えて行動していただけると助かります。


まとめ

「もっと増便すればいい」という意見は、一見するともっともらしく聞こえます。

しかし実際には、

  • 運転士の確保
  • 車両の確保
  • 運行管理体制
  • 法令の遵守
  • 道路状況

など、多くの条件がそろって初めて増便が可能になります。

公共交通機関は、多くの人が安全に利用できるよう、運転士だけでなく運行管理者や整備士、駅員など、さまざまな職種が支えています。

普段と違う状況であれば、尚更説明できる者が現場にいないといけないわけですから、普段ならいない案内係を準備したり・・・みたいなこともあります。

大規模イベントで混雑が発生した際には、「なぜ増便できないのか」という裏側にも少し目を向けてみると、公共交通への理解が深まるかもしれません。


編集後記

私自身、運行管理業務に携わる中で感じるのは、「安全」と「定時運行」の両立は決して簡単ではないということです。

利用者の皆さんにはできるだけ快適に移動していただきたい一方で、安全確認や法令遵守は決して省略できません。

今回のような大規模イベントでは、多くの関係者が見えないところで準備を重ねています。

この記事が、公共交通の裏側を知るきっかけになれば幸いです。

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