「いつ乗っても空いているバスなのに、なぜ廃止されないの?」
「赤字の路線バスを走らせ続けて、バス会社は大丈夫なの?」
路線バスを利用していると、このような疑問を持つことがあるかもしれません。
特に地方では、乗客が数人しか乗っていないバスを見かけることもあります。
一般的なビジネスで考えれば、赤字の商品やサービスは縮小・撤退するのが自然でしょう。
しかし、路線バスは単純に「儲かるか、儲からないか」だけでは判断できません。
なぜなら路線バスには、地域住民の生活を支える公共交通機関としての役割があるからです。
この記事では、赤字の路線バスが走り続けられる理由や、バス会社・自治体・国などがどのように地域の交通を維持しているのかをわかりやすく解説します。
※路線の維持方法や補助制度などは、地域・事業者・路線によって異なります。本記事では一般的な仕組みについて解説しています。
路線バスは運賃収入だけで運行しているわけではない
まず知っておきたいのが、すべての路線バスが乗客から受け取る運賃だけで成り立っているわけではないということです。
当然ながら、路線バスにとって運賃収入は非常に重要です。
しかし、バスを1台走らせるためにはさまざまな費用がかかります。
たとえば、
- 運転士の人件費
- 燃料費
- 車両の購入費
- 車両の整備費
- タイヤなどの消耗品
- 保険
- 営業所などの維持費
- 運行管理にかかる費用
などがあります。
乗客が少なければ運賃収入も少なくなります。
その結果、運行に必要な費用よりも収入が少なくなれば、その路線は赤字になります。
それでも運行を続けている路線があるのです。
赤字の路線バスが走り続ける最大の理由
大きな理由は、路線バスが地域住民の生活を支えているからです。
自家用車を持っている人なら、
「利用者が少ないなら廃止してもいいのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、地域には車を自由に利用できない人もいます。
たとえば、
- 高齢者
- 学生
- 運転免許を持っていない人
- 自家用車を所有していない人
- 車の運転が難しい人
などです。
こうした人にとって路線バスは単なる便利な移動手段ではありません。
通学、通院、買い物、通勤など、日常生活を送るために必要な交通手段になっている場合があります。
そのため、「赤字だから明日から廃止」という単純な判断が難しいのです。
よくあるのは、廃止にしたときに周囲にバス路線があるかどうかです。近隣にバス路線がある場合は、廃止をすること自体のハレーションはそこまで大きなないですが、路線が走っていない場合、交通空白地域として代替の交通手段を用意しなければなりません。この「用意」というのは、近年ではたまに耳にするデマンド交通もあれば、そこのバス路線に自治体が補助金を投入して、民間のバス事業者に引き続き運行してもらうなどです。
赤字の路線バスを維持する仕組み
では、運賃収入だけでは採算が取れない路線は、どのように維持されているのでしょうか。
代表的な仕組みを見ていきましょう。
1.国や自治体などによる支援
地域に必要なバス路線について、国や自治体などによる補助制度が活用される場合があります。
特に、地域間を結ぶ重要な路線や、住民の生活に必要な交通については、一定の条件のもとで公的な支援が行われることがあります。
つまり、
運賃収入だけでは維持できない部分を公的な支援によって補い、地域の交通を維持する
という考え方です。
もちろん、赤字になれば無条件ですべて補助されるわけではありません。
対象となる路線や条件などは制度によって決められています。
2.自治体がバス会社に運行を依頼するケースもある
地域によっては、自治体が主体となってバスを運行するケースもあります。
いわゆるコミュニティバスなどです。
自治体が交通計画を考え、実際の運行をバス会社などへ委託する形もあります。
この場合、一般的な路線バスとは運行の仕組みが異なります。
目的も「バス会社が運賃収入で利益を出す」ということだけではありません。
高齢者の移動手段を確保したり、鉄道駅と住宅地を結んだりするなど、地域の課題を解決するために運行される側面があります。
コミュニティバス化になれば、バス会社は収支率ほぼ100%です。赤字の路線であれば一気に収支はトントンまでもっていけます。が、よくあるのが、バス事業は薄利多売なので、自社で黒字になっている路線があり、そこにまだダイヤを投入する価値があるのなら、コミュニティバスなんて受託せず、自社の路線に乗務員を投入した方が会社的に見れば収支は増えます。廃止になってしまうの心苦しいですが、バス会社も大半は民間バス事業者なので、なるべく自社の黒字路線に運転士は投入したいところなのが本音です。
3.黒字路線など会社全体の収益で支える場合もある
バス会社は一つの路線だけを運行しているわけではありません。
多くの会社では、複数の路線を運行しています。
路線によって利用状況は異なるため、
「利用者が多い路線」
もあれば、
「利用者が少ない路線」
もあります。
会社全体として事業を考え、収益性の高い路線などによって収益性の低い路線を支えている場合もあります。
ただし、赤字路線が増え続ければ、当然ながら会社側の負担も大きくなります。
そのため、この方法だけでいつまでもすべての路線を維持できるわけではありません。
とりあえず理解していただきたいのは、走ってるから黒字ではないんです。
4.鉄道など他の事業と一体で考えられる場合もある
鉄道会社のグループにバス会社が存在するケースもあります。
バスは駅と住宅地を結ぶ重要な交通手段です。
駅までバスで移動し、そこから鉄道に乗る人も多くいます。
そのため、バス単体の収支だけではなく、鉄道や沿線全体の交通ネットワークという視点で考えることもできます。
ただし、会社やグループによって事業構造は異なるため、すべてのバス会社に当てはまるわけではありません。
そもそも「赤字路線」とは?
「乗客が少ないバス=赤字」と思われがちですが、必ずしもそうとは限りません。
ある瞬間に車内が空いていたからといって、その路線が赤字だとは判断できないからです。
朝は多くの通勤・通学客が利用し、昼間は利用者が少なくなる路線もあります。
反対方向だけ空いていることもあります。
そのため、外からバスを見ただけでは、その路線の収支は分かりません。
路線の収支を考える場合は、一定期間の運賃収入と運行に必要な費用などを総合的に見る必要があります。
「このバス、3人しか乗っていないから赤字だ」
とは単純には言えないのです。
赤字ならバスの本数を減らせばいい?
利用者が少ないのであれば、
「1時間に2本を1本にすればいい」
と思うかもしれません。
実際、利用状況などに応じて運行本数が見直されることはあります。
しかし、減便には難しい問題があります。
バスの本数を減らす
↓
利用しにくくなる
↓
バスを利用する人が減る
↓
さらに収入が減る
↓
さらに減便する
という悪循環が起こる可能性があるからです。
たとえば、これまで15分に1本来ていたバスが1時間に1本になったらどうでしょうか。
自家用車を持っている人なら、
「バスは不便だから車で行こう」
となるかもしれません。
家族に送迎してもらったり、自転車など別の移動手段に変えたりする人も出てくるでしょう。
つまり、コスト削減のための減便が、さらに利用者を減らしてしまう可能性もあるのです。
赤字だから減便をするときは、減便対象となる時間の前後の便もみながら決める必要があります。
それでも赤字路線が廃止されることがあるのはなぜ?
公共交通として必要だからといって、すべての路線を永久に維持できるわけではありません。
利用者が大幅に減少すれば、バス会社の負担は大きくなります。
さらに現在のバス業界では、お金だけでは解決できない問題もあります。
その一つが運転士不足です。
仮に運行するためのお金を確保できても、運転する人がいなければバスを走らせることはできません。
そのため、
- 減便
- 運行区間の短縮
- 路線の統合
- 運行形態の変更
- 路線廃止
などが検討されることがあります。
「赤字でも公共交通だから必ず残る」というわけではないのです。
バス路線がなくなると地域にはどんな影響がある?
路線バスが廃止される影響は、単に「バスに乗れなくなる」だけではありません。
たとえば、高齢者が自分で病院へ行けなくなる可能性があります。
学生の通学手段がなくなるかもしれません。
車を運転できない人が買い物へ行きにくくなる可能性もあります。
家族による送迎が必要になれば、その家族にも負担が発生します。
公共交通が少なくなることで、
「車を運転できないと生活しにくい地域」
になってしまう可能性もあります。
だからこそ、地域のバス路線についてはバス会社だけの問題ではなく、自治体や地域住民を含めて考える必要があります。
「利用者が少ないバス=無駄」とは限らない
数人しか乗っていない大型バスを見ると、
「こんなに空いているなら走らせる意味がないのでは?」
と思うかもしれません。
しかし公共交通には、単純な利用者数だけでは測れない役割があります。
たとえば、1日に数人しか利用しない時間帯だったとしても、そのバスがなければ病院へ行けない人がいるかもしれません。
もちろん、利用者が極端に少ない状態で大型バスを走らせ続けることが常に最適とは限りません。
地域によっては、
- 小型バス
- コミュニティバス
- デマンド交通
- 乗合タクシー
など、地域の需要に合わせた交通手段への変更を検討することもあります。
重要なのは、
「バスを残すか、なくすか」だけではなく、「地域の移動手段をどう確保するか」
という視点です。
データで見れば、人数少ない・・・となることはありますが、実際に乗ってみると毎回同じ人が病院にいっている場合もあります。1人のために、走り続けるというのは極端な例ですが、事情も考慮しています。
バス会社だけでは路線を守れない時代になっている
以前と比べて、地域公共交通を取り巻く環境は厳しくなっています。
人口減少や少子高齢化によって、地域によっては利用者そのものが減っています。
さらに、運転士不足などの問題もあります。
そのため、これからはバス会社だけで路線を維持するのではなく、
バス会社・自治体・国・地域住民などが一緒になって地域交通を考えていくこと
がより重要になっていくでしょう。
「赤字だけど必要だから走らせ続ける」という考え方だけでは、持続できない地域も出てきます。
限られた人員や予算の中で、どのような交通サービスを残すのか。
路線バスだけでなく、デマンド交通やタクシーなども含め、地域に合った交通体系を考える必要があります。
私たち利用者にできることは?
地域のバス路線を維持するうえで、利用者の存在は非常に重要です。
当然ですが、バスは利用されなければ運賃収入が入りません。
普段は自家用車を使っている人でも、
「駅へ行くときはバスを使う」
「飲み会へ行くときはバスを利用する」
など、利用できる場面で公共交通を選ぶことが路線維持につながる場合があります。
もちろん、地域交通の問題を利用者だけに任せることはできません。
それでも、実際に利用することが公共交通を支える一つの方法であることは間違いありません。
まとめ|赤字でも走るのはバスが地域の生活を支えているから
路線バスは一般的な商品やサービスとは少し性質が異なります。
採算性はもちろん重要ですが、それだけではなく、地域住民の生活を支える公共交通機関としての役割があります。
赤字でも路線バスが運行を続けられる背景には、
- 国や自治体などによる支援
- 自治体による運行・運行委託
- バス会社全体での路線維持
- 他の交通事業とのネットワーク
- 地域住民にとって必要な交通手段であること
など、さまざまな理由があります。
一方で、赤字だからといって永久に路線を維持できるわけではありません。
人口減少や利用者減少に加えて、近年は運転士不足という大きな課題もあります。
これから重要になるのは、
「赤字のバスを残すべきか」という二択ではなく、「地域に必要な移動手段をどう持続可能な形で残すか」
という視点ではないでしょうか。
普段何気なく乗っている1本の路線バス。
その裏側では、バス会社だけではなく、自治体や国、そして利用者を含め、多くの人が地域の移動を支えているのです。


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