「バスの運賃って誰が決めているの?」
「同じくらいの距離なのに、バス会社によって運賃が違うのはなぜ?」
「最近バスの運賃が値上げされているけど、何にお金がかかっているの?」
普段何気なく支払っている路線バスの運賃ですが、どのような仕組みで決まっているのか知っている人は意外と少ないのではないでしょうか。
バス会社が自由に好きな金額を設定していると思われるかもしれませんが、一般乗合旅客自動車運送事業の運賃には、国への認可申請など一定のルールがあります。
また近年は、人件費や燃料費、車両などにかかる費用の増加を背景に、運賃を改定するバス会社もあります。
この記事では、路線バスの運賃がどのように決まっているのか、なぜ運賃の値上げが行われるのかをわかりやすく解説します。
※運賃制度や運賃の設定方法は事業者・地域・路線などによって異なります。本記事では一般的な路線バスを中心に解説します。
バス会社が運賃を自由に決めているわけではない
まず知っておきたいのが、一般的な路線バスの運賃は、バス会社が完全に自由に決められるわけではないということです。
路線バスを運行する一般乗合旅客自動車運送事業者が上限運賃を設定・変更する場合、原則として国土交通大臣の認可を受ける仕組みになっています。
つまり、
「来月から運賃を100円上げよう」
とバス会社が自由に決められるわけではありません。
バスを運行するために必要となる適正な費用などを踏まえて申請し、審査を受けることになります。
公共交通機関だからこそ、利用者と事業者の双方を考えた仕組みになっているのです。
バスの運賃はどうやって決まる?
バスの運賃を考えるうえで重要なのが、バスを運行するためにどのくらいの費用が必要なのかという点です。
バス会社にはさまざまな費用が発生します。
代表的なものを見ていきましょう。
1.運転士などの人件費
バスを運行するためには、当然ながら運転士が必要です。
しかし、バス会社で働いているのは運転士だけではありません。
運行管理者や営業所の事務員、整備士、本社部門など、多くの従業員がバスの運行を支えています。
こうした従業員の給与など、人件費はバス事業を運営するうえで大きな費用の一つです。
特に近年はバス運転士不足が課題となっており、人材を確保するためにも待遇改善の重要性が高まっています。
2.燃料費
ディーゼルバスなどを走らせるには燃料が必要です。
路線バスは毎日長い距離を走ります。
そのため、燃料価格が上昇するとバス会社の負担も大きくなります。
自家用車であれば、
「ガソリンが高いから今月は車を使う回数を減らそう」
という選択もできます。
しかし路線バスの場合、時刻表に設定された便を簡単に運休するわけにはいきません。
燃料価格が上昇しても、基本的には必要な運行を続ける必要があります。
3.バス車両の購入費
路線バスの車両も無料ではありません。
新しいバスを導入するためには大きな費用がかかります。
さらに、一度購入すれば永久に使えるわけではないため、計画的に車両を更新していく必要があります。
近年では従来のディーゼルバスだけでなく、
- ハイブリッドバス
- 電気バス(EVバス)
- 燃料電池バス
など、新しいタイプの車両を導入する事業者もあります。
環境性能やバリアフリーへの対応なども含め、バス車両にはさまざまな設備が求められています。
4.整備・修理費
バスは多くのお客様を乗せて毎日走るため、安全な状態を維持するための整備が欠かせません。
タイヤやブレーキなどの消耗品も定期的な交換が必要です。
さらに故障が発生すれば修理費もかかります。
路線バスでは何より安全が重要です。
そのため、車両を安全な状態に保つための費用を極端に削減することはできません。
5.営業所や設備の維持費
バスを運行するには車両と運転士だけでは足りません。
バスを保管する営業所や車庫、整備設備なども必要です。
さらに、
- 電気代
- 水道代
- 通信費
- システム費
- 各種設備の維持費
なども発生します。
最近ではバスロケーションシステムなど、利用者の利便性や運行管理を支えるITシステムを導入している会社もあります。
路線バスにはいくつかの運賃方式がある
「バスは乗った距離が長いほど高くなる」
というイメージを持っている人もいるでしょう。
しかし、すべての路線バスが同じ方式ではありません。
代表的な運賃方式を紹介します。
対キロ区間制
乗車する距離などに応じて運賃が変わる方式です。
一般的には、長い距離を利用するほど運賃が高くなります。
整理券を取って乗車し、降車時に乗った区間に応じた運賃を支払うタイプのバスなどで見られます。
均一運賃制
乗車する距離にかかわらず、一定のエリアや路線内で同じ運賃を支払う方式です。
たとえば、
「どこから乗っても大人230円」
といった形です。
利用者にとって運賃が分かりやすく、乗降時の支払いもシンプルになるメリットがあります。
都市部の路線バスなどで採用されることがあります。
特殊な運賃制度もある
地域によっては、
- ゾーン制
- 特定区間の運賃
- コミュニティバス独自の運賃
などが設定されている場合もあります。
そのため、同じ路線バスでも地域や事業者によって運賃の仕組みが異なるのです。
なぜバス会社によって運賃が違うの?
同じくらいの距離を乗ったのに、
「A社では220円だったのにB社では260円だった」
ということもあります。
これはバス会社によって、
- 運行している地域
- 路線の距離
- 利用者数
- 運行コスト
- 運賃体系
などが異なるためです。
たとえば、利用者が非常に多い都市部の路線と、利用者が少ない地域を長距離走る路線では、運行環境が大きく異なります。
そのため、単純に走行距離だけで全国のバス運賃を比較することはできません。
バスの運賃が値上げされるのはなぜ?
ここからが、利用者にとって特に気になるところでしょう。
近年、路線バスの運賃改定が行われるケースがあります。
「利用者からすれば値上げは困る」というのが自然な感覚です。
しかしバス会社側にも、値上げを検討しなければならない事情があります。
理由1.人件費の増加
バスを運行するには運転士が必要です。
しかし、バス業界では運転士不足が大きな課題になっています。
人材を採用し、長く働いてもらうためには待遇改善も重要です。
給与などの待遇を改善すれば、当然ながら会社の人件費は増加します。
「運賃を安く維持すること」と「従業員の待遇を改善すること」を同時に実現するのが難しいケースもあります。
昨今の運賃値上げの大半の理由はこれに尽きると思います。
理由2.燃料価格の上昇
燃料価格が上がれば、毎日多くのバスを走らせている会社には大きな影響があります。
1台あたりでは小さな増加に見えても、何十台、何百台という車両を毎日運行すれば、会社全体では大きな金額になります。
燃料費の上昇は、バス事業のコストを押し上げる要因の一つです。
よく言われるところとしては、リッター1円あがると数千万のコスト増なんて話もあります。
理由3.車両や部品などの価格上昇
バス会社が購入するのは燃料だけではありません。
バス車両そのものやタイヤ、部品など、運行に必要なものは数多くあります。
こうした価格が上昇すれば、車両を維持・更新するために必要な費用も増えていきます。
安全なバスを走らせ続けるためには、必要な設備投資を続けなければなりません。
理由4.利用者の減少
少子高齢化や人口減少、自家用車の普及などによって、地域によっては路線バスの利用者が減少しています。
たとえば、以前は1便に50人乗っていた路線が30人になれば、同じ運行を続けても運賃収入は減ってしまいます。
しかし、利用者が減ったからといって簡単にバスを廃止できるとは限りません。
通学や通院などでバスを必要としている人がいるからです。
その結果、
収入は減る一方で、運行を維持するための費用は必要
という難しい状況になる場合があります。
理由5.安全・サービス向上への投資
バス会社には安全性や利便性を高めるための投資も必要です。
たとえば、
- 新しい車両への更新
- バリアフリー対応
- 安全装置の導入
- バスロケーションシステム
- キャッシュレス決済への対応
- 営業所設備の更新
などです。
こうした投資は、将来にわたって安全で便利なバスサービスを維持するために必要になります。
運賃を値上げすればバス会社は儲かる?
「運賃を上げる=バス会社の利益が増える」
と思われるかもしれません。
しかし、必ずしも単純ではありません。
運賃改定の背景に、
- 人件費の増加
- 燃料費の上昇
- 車両価格の上昇
- 設備投資
- 利用者減少
などがあれば、値上げによって増えた収入が、そのまま利益になるわけではありません。
むしろ、増加した運行コストを補い、現在のサービスを維持するために運賃改定が必要になる場合があります。
もちろん、値上げの理由や経営状況は会社によって異なります。
運賃改定について知りたい場合は、各バス会社が公表している資料などを確認するのが確実です。
値上げしないで本数を減らす方法ではダメなの?
運行コストが増えたのであれば、
「運賃を値上げするのではなく、利用者が少ない便を減らせばいいのでは?」
という考え方もあります。
実際に、利用状況や運転士不足などを理由としてダイヤを見直すケースもあります。
しかし、減便すれば必ず問題が解決するわけではありません。
本数が減る
↓
バスが不便になる
↓
利用者が減る
↓
運賃収入が減る
↓
さらに本数を維持するのが難しくなる
という悪循環につながる可能性もあります。
そのため、
運賃・運行本数・利用者数・運行コストのバランス
を考えることが重要になります。
運賃を上げすぎても利用者が減る可能性がある
一方で、運賃を上げればすべて解決するわけでもありません。
仮に運賃が大幅に高くなれば、
「それなら車を使おう」
「家族に送ってもらおう」
「自転車で行こう」
と考える人が増える可能性があります。(逸走者なんて言います)
すると、1人あたりの運賃は高くなっても利用者が減少してしまいます。
バス会社にとって難しいのは、
サービスを維持できる収入を確保しながら、利用者が使い続けられる運賃にすること
です。
公共交通ならではの難しさといえるでしょう。
これからバスの運賃はどうなる?
今後のバス業界では、
- 人口減少
- 運転士不足
- 人件費の上昇
- 車両価格の上昇
- 燃料・エネルギー価格
- 新しい車両やシステムへの投資
など、さまざまな課題への対応が必要になります。
そのため、地域や事業者によっては今後も運賃体系の見直しが行われる可能性があります。
一方で、単純に利用者へ負担を求め続けるだけでは、公共交通を維持することは難しいでしょう。
国や自治体による支援、効率的な運行、デジタル技術の活用などを組み合わせながら、持続可能な交通を作っていくことが求められます。
バス運賃には「公共交通を維持する」という意味もある
利用者からすれば、運賃は安いほうが嬉しいでしょう。
毎日の通勤や通学で利用する人なら、数十円の値上げでも年間では大きな負担になります。
その一方で、バス会社側には、
安全にバスを走らせ続けるために必要な収入を確保する
という課題があります。
運転士を確保する。
車両を整備する。
新しいバスへ更新する。
営業所を維持する。
安全設備を導入する。
こうした費用を確保できなければ、最終的には運行本数や路線そのものを維持できなくなる可能性があります。
そのためバス運賃は、単なる「目的地まで運んでもらう料金」ではなく、地域の公共交通を維持するためのお金という側面もあるのです。
まとめ|バス運賃は安全な運行を維持するためにも必要
路線バスの運賃は、バス会社が完全に自由に決めているわけではありません。
一般的な路線バスでは、運行に必要な費用などを踏まえ、法令上の手続きを経て運賃が設定されています。
バスを運行するためには、
- 運転士などの人件費
- 燃料費
- 車両購入費
- 整備・修理費
- 営業所などの維持費
- 安全・サービス向上への投資
など、さまざまな費用が必要です。
そして、人件費や燃料費などの上昇、利用者の減少などによって現在の運賃では事業を維持することが難しくなれば、運賃改定が検討される場合があります。
もちろん利用者にとって値上げは負担になります。
一方で、バス会社にとっても運賃を上げればすべて解決するわけではありません。
運賃、本数、利用者数、運行コスト。
これらのバランスを取りながら、地域に必要な公共交通をどのように維持していくのか。
普段何気なく支払っているバス運賃の裏側には、そんな公共交通ならではの難しさがあるのです。


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